作るノウハウと育てるマインドで番組作りを“出来る“に落とし込めた3日間
▼柳原さんの振り返りレポートはこちら
第1回「企画する」
おしゃべりの現在地を、最前線のお二人に聞く
2024年2月11日、ポッドキャスト番組制作ワークショップ「Making of Podcast」全3回の1回目が開催された。第1回と第2回の前半は、ゲスト講師に人気ポッドキャストのパーソナリティたちを迎え、番組の企画や編集をすることについての講義。初回のゲストはポッドキャスト番組「味な副音声」の平野紗季子さんと「ゆる言語学ラジオ」の水野太貴さん。
お話をお聞きしていて、同じポッドキャスト番組でもお二人の番組作りのイメージと目指しているものが全然違っていることに驚いた。
平野さんの番組は幼い頃からの食体験への探求心と大海原にいる誰かに自分の言葉が届く喜びのためにあり、水野さんの番組は相方の堀元さんと共に、より聴いてもらえる番組を目指していく戦略的なコンテンツ作りという印象を受けた。特に、徹底したリスナー目線で聴きやすさを追求し「聴く側の運気が良くなるような聴き味」を目指す水野さんの言葉からはプロ意識をひしひしと感じた。
方向性は違えど、お二人から自分たちの番組への熱意をしっかりと感じられた時間だった。
企画メモから番組を考える
後半のナビゲーターは、長くラジオやポッドキャストの番組制作に携わってこられた大村博史さんと藤山のぞみさんのお二人。
まずは大村さんの番組制作についての講義で、番組を聴いてもらうために大事なことや長く続けるコツなどをご伝授いただく。なかでも「走り出すとひとりでに番組が命をもつ」という言葉が心に響いた。番組を育てる意識をもって、タイトルに(仮)をつけてでもとにかくスタートすることが大事だと背中を押してもらえたように感じた。
その後は藤山さんも加わり、事前課題である自分たちの企画メモにプロの目線でフィードバックをいただいた。
どの受講生の企画も視点や切り口が面白いものばかりで、さらにお二人からより番組らしくなったり思わず聴きたくなったりするためのアイデアがそこへ盛り込まれていく過程は、メモをとる手が止まらないほど興奮した。自分の企画へのフィードバックでは「最初に場面やコンセプトの説明を入れる」など、アイデアをさらに進化させるような胸が躍るコメントをいただいた。
次回の宿題として「声を録音する」が発表され、興奮冷めやらぬうちに第1回目の講座は終了した。
第2回「編集する」
雑談と対話のスペシャリストから番組作りを学ぶ
第2回のゲストは、「となりの雑談」の桜林直子さんと「夜ふかしの読み明かし」の永井玲衣さんのお二人。
お二人ともポッドキャスト番組を作りたいという始まり方ではなかったのが驚きだった。例えば、永井さんのきっかけは文化放送の番組でご一緒した大島育宙さん、西川あやのさんと「三人で会う口実として話せる場所を作った」とのこと。そんな番組の始め方もあるんだと思い、とても興味深かった。
気になる「テーマ選び」については、桜林さんから逆にテーマがあると不自然になるから現場に行ったらいきなり二人で話し出すという豪快な進め方を教えていただいた。「ネタ探し」については、自分が普段気になっていることがネタになるので、自分の興味がどこにあるかを掴むための「内視鏡」をイメージするというお話が面白かった。
最後に、桜林さんからいただいた「なぜやろうと思ったか、動機や原点を自分で握っておくとそれが戻ってくる場所になる」というメッセージを心に刻み、自分の番組を自分らしく大事に作っていきたいと思えたゲストトークだった。
自分の声を聴き、編集する
後半のナビゲーターは、1回目に引き続き大村博史さんと藤山のぞみさん。いよいよこの講座のキモである「声を聴き、番組を編集する」工程に入っていく。
編集についての講義では、ディレクターとして自分の声に客観的に触れながら、聴きやすさを目指してカットしていく箇所の目安や、音で伝えるポッドキャストならではの注意点などを教わった。続いて、事前課題として受講生が提出した声の録音素材をもとに、大村さんによる実際の編集作業も交えながら、全員で音声編集のポイントを確認していく。自身の番組には笑い声をカットする編集を入れていただいたが、聴いてみるととても的確で、他の受講生の声の編集から学べることも非常に多く、この回もメモをとる手が止まらなかった。
最終回に向けての宿題は「BGMを選ぶ」と「タイトルコールを録音する」。プロの手によってどんどん番組らしくなっていくことにワクワクしながら、第2回目の講座は終了した。
第3回「演出する」
演出の視点から、BGMと効果音でタイトルコールをプロ仕様に
講座最終回となる3回目の前半は、ナビゲーターのお二人と一緒にこれまでたくさんの番組制作に携わってきた加藤海陸さんによる講義。
まずは「前テーマ」について加藤さんからの解説。この前テーマこそ、番組の最初に流れる音楽や効果音とタイトルコールによって構成される番組の顔となるもの。
その大事な前テーマと番組を彩るBGMの選曲は、自分はとても悩ましいと感じていたが、加藤さんから「最終的には自分の主観でOK」と教えてもらえて心が軽くなった。補足として藤山さんから、選曲を含め、演出はどんな番組にしたいかのイメージ次第であることや、それを踏まえて前テーマがいつでも立ち返ることができる場所になるように、番組のイメージをしっかり持っておくことの大切さを教わった。
その後は、音声編集ソフトの画面を写しながら、BGMや効果音で演出が入った受講生のタイトルコールを加藤さんから一つずつ紹介していただく。複数の音楽の組み合わせや効果音との組み合わせ、場面転換でのBGMの入れ方など多彩なパターンがあり、一つとして同じものがなかったことに驚嘆した。自分のタイトルコールにも名前と番組名にそれぞれ「ディレイ」という演出が施されており、あまりにも番組らしくて聴きながら震えてしまった。
音楽で自分の番組を彩る
大村博史さんと藤山のぞみさんによる後半のナビゲートもいよいよ最終回。
演出についてのお話を聞きながら感じたのは、やはり聴き心地が何よりも重要ということ。例えば、トークのスピードと合うBGMのチョイスだったり全体の音のバランスだったりはもちろん、聴きやすいものになっているか、不快な部分がないかを最後は自分の耳で聴いて判断するという、音に対してとても丁寧で繊細な作業と感じた。
また、音楽を効果的に使って「聴かせ方・魅せ方」を考えるという演出らしいお話もとても興味深かった。特にBGMは入口に気を遣うことが重要だというアドバイスは、実際に受講生全員の番組それぞれの入り方をパターンで聴かせていただいたこともあり、強く実感することができた。自分の番組については「選んだ曲が内容とリンクしている」とお褒めの言葉をいただいた。
今後も前テーマやBGMを含め、すべてを使って番組を盛り上げるような演出をしていきたいと思う。あまりにも満足度が高い体験ゆえの放心に近い余韻とともに、全3回の講座は終了した。
全3回の講座を受けての感想
ゲストのお話からは、色々な視点で自身のマインドや番組の方向性を考える機会をもらい、ナビゲーターからは番組作りの工程やノウハウを教わりながらプロの仕事を見せてもらい、回を追うごとに自分のポッドキャスト番組のイメージが具体的になっていくことにワクワクした。毎回、他の受講生が作る番組に触れて、常に「自分だったらどうするか」という考えが共にあったこともイメージを鮮明にしていけた理由だと思う。
ポッドキャスト番組の制作を「自分でも出来るかもしれない」と思わせてくれて、実作業レベルでも「できること」に落とし込めた、本当に素晴らしい講座だった。今後は、初回にナビゲーターの大村さんがおっしゃっていた「番組を育てる」ということを楽しみながら、長く続けていきたい。
アシスタント受講生 やまだ
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