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「Making of Podcast」受講生のオリジナル番組を一挙紹介します!

声を起点に、パーソナリティの個性溢れる豊かな世界観が広がる音声メディア「ポッドキャスト」。SPBS THE SCHOOLでは、ポッドキャストの企画、編集、演出をプロから学びながら、自分たちのオリジナルの番組を制作する講座「Making of Podcast」を開講しました。
今回は、受講生が講座の最終課題として制作したオリジナルの番組を、企画担当者の鈴木と大貫が紹介します!

大貫:本講座では全3回のカリキュラムを通して、15のオリジナル番組が出来上がりました。受講生は全員ポッドキャスト制作が初めてでしたが、その人の個性や番組の世界観がどれも際立っていますね。

鈴木:そうですね。それでは早速紹介していきたいと思います!


パーソナルなメディアとしてのポッドキャスト

鈴木:私が始めに紹介したいのは「きっとだれかのたからもの」です。声のトーンや話すスピード感から、とても親密でパーソナルな印象を受けました。おそらく、普段からわりとゆっくり話すような方だと思うのですが、その様子が番組にも表れていました。

大貫:ラジオやポッドキャストでは話し手のことを「パーソナリティ」と称しますが、まさに人間性がそのまま番組に表現されていましたね。番組では、心臓の音を聞く時間として無音の時間が数秒あったことも面白かったですよね。

鈴木:「ラジオでは無音はあまり好まれない」とナビゲーターの大村さんがおっしゃっていましたが、この番組の世界観を踏まえて、普段きき逃してしまっているような小さな音に耳を傾けるという時間を用意することは、パーソナルなメディアだからこそできることだと思いました。

ポッドキャストには、誰に話すでもないような些細な出来事であったとしても、その人の声を通して聴くと自然と心に入ってくるような不思議な浸透力がありますよね。


パーソナリティの個性を演出する工夫

大貫:「もやもやもにょもにょ」や「だーやまの語るシスナイト」は日常のモヤモヤを紹介する番組です。これらもポッドキャストがパーソナルな内容を話すことができるメディアであることを活かした企画でしたね。

鈴木:日頃のモヤモヤをテーマにするところまでは一緒でも、番組のテンポやテーマへのアプローチが異なっていて、全く別の番組になったことが面白かったです。

「もやもやもにょもにょ」では、語り手は普段のありのままの落ち着いた声のトーンでモヤモヤを言語化しているように感じました。一方で「だーやまの語るシスナイト」は企画段階からパーソナリティのキャラクターをポジティブで溌剌とした設定として作り込み、モヤモヤを前向きに変換していくという企画・演出でした。

大貫:ありのままの自分で話すことも、普段の自分とは異なるキャラクターを別に用意することも、どちらが正解ということはなく、作り手が目指したい番組の世界観次第ですね。


どんな時に聴きたい・聴いてほしい番組?

大貫:鈴木さんは普段どんなタイミングでポッドキャストを聴くんですか?

鈴木:そうだなあ。私は車の運転中や家事などの時間によく聴いている気がします。そういう意味では、作り手の側に立つと、聴いてもらいたい時間を想像することも企画の一つのように感じますね。

「おしゃべり、リハビリ、かろやかに。」は、自分が聴きたい時間帯を具体的に想像しました。もっと上手におしゃべりができるようになりたいというモチベーションをきっかけに日記を朗読する番組で、等身大な語りの聴き心地がよかったので、寝る前のちょっとした時間に流したいと思いました。大貫さんはどんな時に聴きます?

大貫:移動中や、ただぼーっとしている時に好きな番組を流しています。何かの作業をしながら聴くことはあまりなくて、ポッドキャストを聴く時はそれだけに集中している時間が多いです。

「ゆる Chill Night」では、金曜日の仕事が終わってから寝るまでの時間でゆるく聴き流してもらいたいということが番組の冒頭で話されていました。聴きたいシチュエーションをリスナー側が想像してしまう番組がある一方で、聴いてもらいたい時間帯やその時の聴く側の心持ちのようなものを制作段階からがあらかじめ想定した上で、その思いを番組名やコンセプトに込める方法もありますね。

番組で話されているのは「最近自転車をよく置き忘れてしまう」という取るに足らないエピソードですが、それくらいのゆるい内容は、金曜日の夜にお風呂から上がって、ビールを片手にくつろぎながら聴くにはぴったりだと感じました。


「雑談」というテーマ

鈴木:自転車のくだり、面白かったです(笑)。雑談系の番組はほかにもありましたよね。「TOKYO DEEP DIVE」は、岐阜県から上京したパーソナリティが田舎者視点で東京を観察してみるという番組でした。

必ずしも何かの役に立ったり学びになったりする内容ではなくても、雑談という切り口も1つの立派な番組になると思いました。ゲストとして講座に登壇してくださった桜林直子さんがパーソナリティをされている番組「となりの雑談」も、作り手視点で聴いてみるといろいろな工夫が凝らされているんだなと感じました。企画次第で番組のテーマ設定には無限の可能性が広がりますね。


環境を番組に活かす

大貫:制作された番組は静かな部屋で収録されたものが大半でしたが、中には街歩きの様子をナレーションしたり、雑音の多い屋外で収録したりしていた受講生もいました。

鈴木:「道草百科」と「聞いているあの人にこそ、聞いてみたい Talk in the Park 東京23区(以下、「Talk in the Park」)」ですよね。「道草百科」は街歩きをしながら気になった場所を紹介していく番組でした。初回は世田谷区経堂。街を歩いている人がどんなことを考えているのか、『孤独のグルメ』のようなモノローグが面白かったです。

大貫:「Talk in the Park」はタイトルの通り、収録場所が公園でした。車が側を走っている音など、屋外ならではの程よい雑音がBGMとして活かされていて、聴き心地がよかったです。

鈴木:屋外での収録は一長一短ありますよね。講座では「録音環境として街に流れているいろいろな音が入ると、音源の編集が難しくなってしまう。けれどもそのような雑音は、番組のいい演出になる場合もある」という話がありました。音へのこだわりも世界観を表現する大切なポイントなんだと感じました。

また、「Talk in the Park」はパーソナリティのほかにもゲストを呼んでいたことが印象的な番組でした。講座では「2人で番組を作りたいけれど、相手を探すことが難しい」という悩みを抱えている受講生が多かったですが、取材形式で番組にゲストを呼ぶことは一つの解決策だと思いました。ライターの武田砂鉄さんがゲストで出演されていてびっくりしましたね!

大貫:武田砂鉄さんは、取材に臨む際の心構えのようなものを話していました。普段の編集の仕事にも活かせる内容で今後も楽しみです。


こだわりや魅力をひたすら語る

大貫:あるテーマについて役立つようなヒントやアドバイスを紹介する番組は、ほかにもたくさんありましたね。

鈴木:そうですね。「こだわりの家事を語ろう『かじカジらじお』」は、ゲストを呼んで家事のこだわりについて話を聴く番組でした。家事って日常のルーティンだからこそ、改めて言語化する機会はなかなかないと思うんですよ。一つの家事を取り上げて、その人ならではの順序や決まりごとを共有してもらう時間は、とてもワクワクしました。

大貫:段取りやルールが細かければ細かいほど、聴き入ってしまいますよね。この冗長さに込められた家事に対する思いは、雑誌の特集などでは表現できないような気がしました。

鈴木:「My Essentials Journey」にもこだわりへの熱量を感じました。ものを購入するときにすごく時間をかけてしまう性格を活かして、吟味を経て買ったアイテムを紹介する番組で、初回のテーマはサングラス。

サングラスのこだわりや魅力について、ただひたすら熱く語る番組で、それだけで10分も話すことができるモチベーションが素晴らしかったです。これまで私はサングラスについて深く吟味したことはなかったのですが、ちょっと調べてみようかな、と心が揺れました(笑)

大貫:ポッドキャストは、こだわりや熱量から生まれる冗長な話との親和性が高いと思います。今後、サングラス以外でどのようなアイテムが登場するのか気になりますね。

鈴木:「COME AND GO」は接客業をされているパーソナリティが、その職業に向いている性格や特徴、接客業にまつわるあれこれを紹介する番組です。私も過去に書店員として働いていた経験があるので、接客という大きな共通点がありながらも、自分とは異なる職種で働いている人の話を聴いていると、頷いてしまう内容が多かったです。

大貫:「接客業」という大きなテーマで話をすることって意外とないですよね。日常会話では、アパレルだったり飲食店だったり、自分が就いている職業に寄せて話をしてしまうことが多いと思うので、斬新な切り口だと感じました。


「好き」を共有する、「好き」を広げていく番組

鈴木:「声優愛あふれる Say You Love ラジオ!」「もっとウケたい朝ドラ」など、リスナー層がはっきりとした番組も目立ちました。

大貫:声優や朝ドラといった特定のキーワードをタイトルにすることで、番組で話されていることが聴く前からある程度予想できるので、そのようなコンテンツが好きな人たちに聴いてもらいやすくなりますよね。これもポッドキャストの親密さならではの工夫だと思います。

鈴木:「キキカジ劇場」では、演劇、身体表現、アート作品のような言葉にしづらい創作に携わる人たちをゲストに招いて、言葉を尽くしてそれらの魅力を発信していこうというテーマが企画段階から決められていました。

パーソナリティは普段からそのような創作の現場で活動している方ですが、想定されているリスナー層は、舞台を観に行ったり劇場に足を運んだりしたことがない人たちです。このように、自分とは全く別の趣味や関心を持っている人たちに向けて番組を制作している受講生もいて、企画のバリエーションの幅広さを実感しました。


企画や演出に、創作の視点を入れてみる

大貫:最後に、「空想本棚〜まだ存在しない漫画を語る〜(以下、「空想本棚」)」を取り上げたいと思います。この番組は企画や演出での創作力を感じました。

鈴木:そうですね。もちろん、今回制作されたすべての番組はそれぞれの持ち味が活かされていてどれも面白いのですが、その中でも特に創作力にユーモアがありましたね。

「空想本棚」は、パーソナリティが少女漫画の編集者で、仕事で作品化が実現しなかったアイデアが日の目を浴びないままお蔵入りしてしまうことを番組の企画に活かしていました。そのような企画背景があり、番組では世の中に存在しない空想の漫画の話を、あたかも実際に作品化されているコンテンツのように紹介しています。

大貫:具体的な企画背景を知らされないまま「いやぁ〜、『プリンセスエヴァ』の最新話は最高でしたね」と言われると、「あれ、実在する漫画なのかな?」とびっくりしてしまいますよね(笑)


大貫:ここまで受講生の番組を紹介してきましたが、これほどオリジナリティー溢れる番組が揃うとは、開講前には想像もしていませんでした。

鈴木:そうですね! 音声が提出された段階からすでに個性が際立っていましたが、BGMやジングルが入って、より一層番組としての世界観が引き出されたと思います。
 
SPBS THE SCHOOLでは、これまで雑誌や歌集を制作する講座などで「編集」というキーワードを大切にしてきましたが、ポッドキャストにもその視点を活用できるし、逆にポッドキャストを編集する過程で学んだことは、別のことにも活かせる気がしました。
 
本講座の最終課題では、第0回と称してまずは10分程度のポッドキャスト番組を受講生に制作してもらいました。ここから各番組が回数を重ねていくことで、自分たちが目指している番組の世界観をリスナーの皆さんに届けて欲しいです!


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