「あなた」に手にして欲しい 雑誌デザインは読者と編集者を繋ぐコミュニケーションのはじまり
第8回(2023年8月5日開催)のテーマは“デザイン② 本・雑誌に生命力を与える”。前回(第7回)の講義でもご登壇いただいたアートディレクター(以降、「AD」と略)の佐藤亜沙美さんをお迎えしました。最終回にふさわしい雑誌デザインについて、佐藤さんが手がけられた雑誌“文藝”リニューアル秘話を元に解説くださいました(2019年夏季号以降、佐藤さんがADとして携わられています)。
前半は佐藤さんによる講義、後半は雑誌制作コースの受講者の事前課題(作りたい雑誌の表紙デザイン)に対する佐藤さんからのフィードバックでした。
講義パートで特に印象的だったのがデザインは読者とのコミュニケーションだということ。佐藤さんは、雑誌の可視化されていないモノをビジュアル翻訳して読者に届けるつもりで、編集者に帯同しているイメージと表現されていました。雑誌の顔となる表紙は、まさに「こんにちは」という読者への声掛けなのです。AD自身の好みよりも、手にする読者の気持ちを常に考え、「私も手にしていい雑誌かなぁ?」を感じさせず、雑誌側が「あなたのことも考えて、受け入れられるよ」とデザインされているとのことでした。
佐藤さんはご自身の仕事についても、蛍光色や黄色を好んで使っているが、軽く話しかけて良さそうな〔≒書店で気軽に手に取ってもらえる〕感じを出したいから、と分析されていました。私自身の行動を振り返っても、書店で表紙に誘われ無意識のうちに雑誌を購入する、ジャケ買いならぬ表紙買いをしていることを思い出しました。
“文藝”は、今までの文芸誌の概念を覆し、いわゆるZ世代と言われる若者までを読者に取り込もうと、素人の私には想像もできない数々の工程を経てリニューアルされました。SNS時代に合わせて出版元の河出書房新社のホームページでは“文藝”の表紙が動いています。“文藝”のキャラクターの“文ちゃん”が、表紙を動き回るgif.アニメーションを皆さんも是非ご覧ください。
後半は、佐藤さんによる事前課題についてのフィードバックでした。佐藤さんが一人ひとり向けたコメントが的を得ていて、作成した表紙の良い点を見つけ、さらに佐藤さんが「私だったら◯◯してみる」と、ブラッシュアップのため新しい視点を追加してくださいました。受講生それぞれへのコメントも自分自身の制作にも活かせるコメントばかりで、メモする手が止まらない時間となりました。
ちなみに私の表紙についての佐藤さんからは、表紙フォントの選択、抽象度が高いテキスト、読む気のない人に読ませる工夫が足りないと、コメントをいただきました。佐藤さんの前半の講義とともに表紙デザインを再考しようと思います。
これから、制作コースのメンバーは本格的に雑誌作りに入ります。「SPBS編集ワークショップ2023」も残すところ3回のワークのみになります。9月末にメンバーそれぞれが編集長となり、雑誌を創刊することを目標に入稿ギリギリまで頑張ります!(希望者は10月以降SPBSにて販売します。お楽しみに。)
アシスタント受講生 やがい
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