書く、寝かせる、読み直す 書き手と読み手をつなぐ記事づくり
2023年7月8日の編集のワークショップ第6回は、文筆家の佐久間裕美子さんをお迎えしての開催。本ワークショップにおいて、最初で、おそらく最後のオンラインでの講義ということもあり、いつもと違った新鮮な気持ちでお話を聞くことができました。
前半は佐久間さんご自身の経験を交えながら講義をしていただきました。「原稿への向き合い方」がテーマでしたが、企画を立ち上げるところから取材の計画、実際に記事を書くときに考えていることなど、幅広く実践的なお話をしてくださいました。
特に印象に残っていることがふたつあります。
ひとつめは「一旦寝かせる」こと。今回のワークショップで何度も登場した大切なキーワードです。最後まで読んでもらえる文章が書けているかどうか不安なとき、まだ世に見つかっていない「原石」を発見したとき、自分はまだ対象を記事にすることばを持っていないと感じるとき……一度筆を置いてみること。書き手が焦らずにゆっくりと呼吸をしてみることが、読者を惹きつける文章が生まれる秘訣なのだということがわかりました。
もうひとつは、記事を書いていない時間の重要性。記事を書くにあたり、自分ではない読者を想定するために、まずは自分を見つめ直すことが大切なのだそうです。「余白や回り道のように思えること、目的がないようなことが後からじわじわ効いてくる」という佐久間さんのことばが、講義が終わった今でも刺さって抜けません。文章を書くときも、例えば日記のように、自分の意思で書くものにこそ自分が宿るのだとか。人には見せないところで向き合ったときに滲み出てくるものが本当の自分なのだと言います。他人ために書くということは、決して自分を消すことではなく、両者を一緒に抱きしめることなのだと感じました。
後半は、受講生が事前課題として考えてきた、自分の記事につけるリードを添削していただきました。どのリードもとても素敵で、それぞれの参加者の自分の記事に対する愛着が伝わり、まるで読者を誘う詩のように思えました。ひとりひとりに丁寧にフィードバックをくださる佐久間さんの温かさが画面越しにも伝わり、和やかな気持ちで自分の文章と向き合うことができました。一方で、プロならではの鋭いアドバイスも。「読者はあなたと同じように感じているかもしれないけど、同じ知識を持っているとは限らない」というご指摘にハッとし、読者を知るために自分を知ることの大切さを早速実感する機会となりました。
ワークショップの講義パートも後半戦に突入し、Aコースの受講生は自分の雑誌制作に向けて動き始めています。初めての取り組みに焦ったり迷ったりすることもたくさんある中で、今回の講義自体が私たちにとっての深呼吸になったような気がします。自分にとっても読者にとってもより魅力的な記事を書くために、一度足を止めて、大きく息を吸ってみる。私も行き詰まっているところから一度離れて、これまでの講義や自分の計画を振り返ってみようと思いました。
アシスタント受講生 むらい
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