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【企画担当者に聞く!】「知る」で終わらない。農園フィールドワークで得たこと。「おいしいってなんだ?」の真髄

自分と社会、地球の未来をつくる「食」をどのように考え、選択していくか。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のすべての感覚をフル稼働し、「おいしい」を要素分解し、食と向き合うことで、自らの生き方を再編集する本講座。現在、アーカイブ視聴コースも販売中ということで、企画したSPBS THE SCHOOL担当・鈴木美波に、企画化までの経緯やこの講座の真髄について聞きました。

本屋が「食」の講座をする理由

──SPBSは本屋や出版を生業にしている会社ですが、なぜ、農園フィールドワークを講座にしようと思ったのですか?

鈴木:私たちは、本屋だから、「読書はいいですよ、大事ですよ」って言うんですが、世の中に情報はたくさん溢れていて、とても全部消化はしきれないですよね。「知る」だけなら、本すら読まなくても、AIがうまくまとめてくれた情報だけでいいかもしれない。一方で、そもそも人間が、実際に生きるという行為にインストールできる知識はそう多くはないんだろうなという気がしていて。

そんな中で、その人の血となり肉となるような知識の提供、「知る」で終わりにしない学びの提供を目指す本屋があってもいいのではないかという気持ちがあります。本を読んで終わりではなくて、それをどうやって自分の暮らしや人生に活かしていこうかと思える本をお届けしたいし、そういう機会や場をつくりたい。受けた人の生き方の肯定や変化に何らか寄与できればという思いがありますね。

──改めて、この講座の開催に至った経緯やきっかけを教えてください。
 
鈴木:実は「おいしいってなんだ?」の前に、2022年に開講した「都市生活者のための農的生き方講座」という講座があったんです。この講座も、三上奈緒さんにナビゲーターをお願いした講座なのですが、私が三上さんのことを初めて知ったのは、2021年に創刊された「soil mag.」という雑誌の記事でした。
 
“旅する料理人”として、日本中を歩きながらその地の食材、人、料理に触れ、時には焚き火を囲んで現地の人と食事を楽しむ活動をしている三上さんは、肩書きこそ”料理人”なんだけど、その記事では食材そのもののこととか、食べる人の気持ちとか、料理の周辺に広がるものごとにフォーカスが当たっていて、そこから、自分はこう生きていきたいっていう姿勢や思いが伝わってきて、面白いなと思ったんです。

SHO Farmで料理をする三上奈緒さん

個人的な話をすると、私自身が出産を機に埼玉に拠点を移して、それまでよりも土に近い生活をするようになったところで、土いじりをしているとなぜか安心するな、楽しいなっていう感覚が実感としてあったんですね。世の中はコロナ禍、個人的にもずっと東京でがむしゃらに働いてきた生活が出産と移住で一気に変わり、不安定に傾きがちな心身が土に接していると安心する。そんな時に、三上さんの記事を読んで、とても感銘を受けたし、共感したんですよね。

それで、三上さんにお声がけをして、2022年にもっと土に近い暮らし、農的な暮らしを探求する講座「都市生活者のための農的生き方講座」を開催しました。この講座の振り返りの中で、暮らしの中でも「食」に焦点を絞って講座を再構成したのが、今回の「おいしいってなんだ?」です。

講座が進む中で感じられる「おいしい」のスケールの拡大


──この講座の面白さ、受ける価値ってどんなところにあると考えますか? 

鈴木:とにかく面白いのは三上さんの視点です。三上さん監修のカリキュラムが本当によく練られていて、最初は「おいしい」の要素分解をするような感じで始まるのですが、1回目で考えた「おいしい」という概念が、びっくりするくらいに大きな広がりを持って最終回を迎えるようにできているんです。初回は、自分の目の前にある食卓から「おいしいってなんだろう」と考えていたけれど、回を重ねるごとに視野が広がっていき、最終的には「私にとってのおいしい」から、食べ物がつくられる工程で関わる色々な人の健やかさとか、「地球にとってのおいしい」ってどういうことだろうかとか、そういうことに思考が広がりましたという感想が受講生からもありました。

食事の際は、普段よりも心を込めて「いただきます」と「ごちそうさま」

──そうした「おいしい」のスケールの拡大という体験は、アーカイブ受講でも味わえますか?
 
鈴木:そうですね。「おいしい」が自分の目の前にある食卓から始まって、気づいたら地球スケールにまで広がっているという流れは、アーカイブでも十分に感じられると思います。
 
おすすめは、アーカイブを受講していただいたら、できれば農の現場を見に行ってみるとか、プランター菜園・コンポストを始めるなど、自分の経験につなげてみること。講座内でも話題になりましたが、スーパーの野菜売り場の野菜がどこでどのようにつくられているんだろうという目線で見てみるのでも良いと思います。見たり、触れたり、味わったり、匂いを嗅いだり、五感につなげてもらえると、よりこの講座の真髄に近づけるのではないかと思います。

また、今回は受講期間終了後にアーカイブ視聴者向けにオンライン交流会も実施しようと考えています。さっき、ご提案したような行動してみるということのひとつに、感想をシェアするというのもあると考えていて。感じたことを言語化してアウトプットすることは、講座を受けただけで終わりにしないための大事な工程になると思います。
 
今回、フィールドワークコースを終えて、受講者のみなさんの感想をお聞きしましたが、それぞれの感受性で受け取ったものは、本当にそれぞれ多様で、それをお互いに知るというのもとても興味深かったですね。

言語化できないことにこそ学びがある


──講座を通して印象に残っていることはありますか?
 
鈴木:受講生の方々と感想のシェアをしていると、「言語化しにくいんですけど……」という前置きが度々出てきました。私たちが日々扱っている「本」の大部分は言語でできているし、一般的なコミュニケーションにも言語は欠かせないものなのだけど、でも世界って本当は言語化できない物事の方がずっと多いということに改めて気付きました。特にこの講座は、言語化できない部分が多いのですが、この言語化できない部分に向き合うことこそが大事で、そこに学びもあると思うんですよね。
 
フィールドワークコースのクロージングパーティで、三上さんが焚き火料理をしてくれたんですが、それを見ていて思ったのは、料理をしている中で、火の番をしている時間が長いということ。火を起こして、火を絶やさないために落ち葉や枝を拾ってきたり、それをくべたり。料理には加熱って欠かせないですが、焚き火でそれをしようとすると、実はすごい大変なんだな、料理ってすごいなって思いました。
 
ちょうど今年の3月に新装版で出た『火の賜物 ヒトは料理で進化した』という本があって、火を起こして、料理をすることでヒトの脳は進化してきたという内容なのですが、本当にそうなんだろうなと感じさせられました。料理や「おいしい」から、「火」って、普段だったらなかなか発想できないし、火を見る機会もあまりないので、新鮮でしたね。

──最後にアーカイブ受講を検討されている方に一言お願いします!

 鈴木:食が疎かになっている気がするけれど、凝ったものは作る時間がないし……とさまよっている方に、「時短」「丁寧な食卓」といった切り口とは別の角度から「食べること」、ひいては「生きること」について考えるきっかけになれば嬉しいです。

 先にもお伝えしているように、「おいしい」という概念を根本から問い直す講座になっていて、それはアーカイブ受講でも十分に実感いただけると思います。そうした前提の上で、”視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のすべての感覚をフル稼働し、食に向き合う”と講座紹介にも書いてある通り、「おいしいってなんだ?」の真髄はやはりフィールドワークコースを受けていただいた時に一番味わっていただけると思うんですね。その点では、来年もさらにブラッシュアップして「おいしいってなんだ?」講座を開催する予定がありますので、それに向けた予習も兼ねて、アーカイブ講座でエッセンスを味わっていただければと考えています。

*アーカイブ視聴コースは12月31日(日)12時まで受付中!
【視聴は2024年1月31日(水)まで】

*「おいしいってなんだ?」講座の詳細

*受講生レポートも掲載中!

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