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SPBSスタッフが選ぶ、2023年の本──年末のごあいさつに代えて

こんにちは! SPBS広報のTです。
 
創業15周年を迎えた2023年。SPBS公式noteでは、「SPBS BOOK TALK FESTIVAL」関連企画に始まり、本屋の学校「SPBS THE SCHOOL」の企画者&講師インタビューや受講レポート、そして先月スタートしたばかりの編集部による連載「本が読めない」など、SPBSの活動をさまざまな角度からお伝えしてきました。いつもご覧いただいているみなさま、ありがとうございます。
 
さて、年末のごあいさつに代えて、今年もSPBSスタッフが2023年に読んだベスト本をご紹介します。みなさんは今年、どんな本に出会いましたか? 本と共にどんな時間を過ごしましたか? ご自身の1年間を振り返りながら、ご一読いただければ幸いです。

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『あなたは私と話した事があるだろうか』(折坂悠太 著/WORDSWORTH/2023年)

ここ数年、いろいろなジャンルの本を読むようになったものの、少しハードルが高いように感じて詩集はあまり読んだことがありませんでした。そんな中でシンガーソングライターとしてとても好きな折坂悠太さんの(歌)詞集が出版され、手に取りました。本として読むと、メロディにのった音楽という形で耳にする歌詞としての言葉とはまた違った味わいがあり、歌詞としての素晴らしさと詩としての素晴らしさを感じた1冊です。書き下ろしのエッセイからは言葉を扱うことへの矜持や真摯さを感じ、思わず涙が出るような気持ちになりました。本としての佇まいも素敵で、本という形を成すことに価値のある1冊だと思いました。(SPBS渋谷本店・店長K)


『違国日記 11』(ヤマシタトモコ 著/祥伝社/2023年)

日々、友人とのとりとめのないおしゃべりに助けられているのですが、そんな大事な瞬間のような一冊。そしてなにより、違国日記に出てくる人たちそれぞれの「わたしの愛はわたしのものだ」という眼差しや佇まいに何度救われたかわかりません。わたしは恋愛をしない人ですが、わたしにも愛が存在するし、わたしがわたしであることを知っているよ、と遠くから言ってくれているような安心感を読むたびに感じていました(常に連絡は取り合わないけど、あなたが元気だとうれしい、という存在のような)。この先生きていく中で、しんどい時もたのしい時もきっと傍らにあり続ける本だろうな、と思います。(SPBS豊洲・虎ノ門・副店長S)


『はだかのゆめ』(甫木元空 著/新潮社/2023年)

今年はこれが真っ先に浮かびました! 甫木元空さんの初小説で、埼玉県越生町から、母親の故郷である高知に移り、祖父、限られた時間を生きる母、その土地の人々との暮らしを私小説的に描いた作品。なんせ私、同じ越生町出身。ということもあって、強烈な印象を自分に残してくれた作品となりました。
心地いいのは、土佐弁や擬音語がつくりだすリズムある文体。それに乗って、息子としての主人公の心の中、娘を亡くそうとしている祖父、地元の人々、亡き父が残した音楽、母が残したタイムカプセル、いろんなところにログインしていきます。不思議なあたたかさとユーモアに包まれていて、昔行った夏祭りでの出来事をホームビデオで見ているような気持ちに。頭で読むというより流れに身を任せて読ませるような。まさに夢の中のように時間や場所を飛び越えていく、居る人、もう居ない人の描き方が印象的な小説でした。
甫木元さんはビアリストックス名義で音楽活動もされていて、映画監督までやられています。小説と同名の音楽も最高なので、年末にまた聴きながら浸りたいです。(SPBS THE SCHOOL・マネージャーS)


『体温と雨』(木下こう 著/牛隆佑 発行/2019年)

言葉にすることで損なわれるものがある。
感じたこと、思ったことを的確に言語化することは非常に困難で、大事なことほど言葉から滑り落ちる。
過不足なく伝えることが目的である言葉は、その役割を終えた瞬間に消滅する。
けれども表現における言葉の機能は意味の伝達にはない。
短歌における言葉は31字に削ぎ落とされ、意味の上を滑り落ちていった記憶や想いが奥底に残滓として残るのがいい。
木下こうさんの歌には心地良い韻律がある。
言葉の余白を味わう上での「音」の重要性、短歌の音楽性を実感できる歌集。
言葉の意味とイメージと韻律が絡み合い、長く噛んでいたくなる歌が良い歌なんだと思う。(SPBS THE SCHOOL・企画担当TK)


『アーサー・マンデヴィルの不合理な冒険』(宮田珠己 著/網代幸介 イラスト/大福書林/2021年)

最初の5ページを読んだら、気が付いたら読み終えていました。かの有名な『東方見聞録』と同じ時代に書かれた、ジョン・マンデヴィルの『東方旅行記』は嘘だらけ! ところが出鱈目旅行記をローマ教皇がえらく気に入ってしまい、ジョン・マンデヴィルの息子アーサー・マンデヴィルを呼びつけ、書に出てくる幻の王国を探しに旅に出るよう命じるのです。頼りにならない嘘っぱちの旅行記を手に、しぶしぶ旅に出た息子。冒険に消極的な主人公というのは間々ある設定かもしれませんが、父の奇行を恥じ、ひっそりと土いじりを楽しんでいた息子が無茶苦茶な命を受ける展開に、初っ端から「これはかわいそう……」と同情してしまいます。ちなみに『東方旅行記』は実在する本で、宮田さんの愛読書だそう。旅路で出会う奇奇怪怪な生き物たちが描かれた絵巻つきで、読了後もじっくりと楽しめる一冊です。(SPBS編集部・S)


『人間失格』(太宰治 著/KADOKAWA/2007年)

太宰治の代表作『人間失格』を読んだのは、普段は自ら手に取らない純文学をなんとな~く買ってみたのがきっかけでした。高校3年生で経験したコロナ禍以降でしょうか。自分も社会も不安定な中、そんな社会・生活に散らばる孤独や生きにくさについて自覚的になった気がします。本書は、極めて繊細で臆病な性格の主人公「葉蔵」の破滅的な人生が描かれた作品です。同作者の手がけた「走れメロス」などからは想像もできないような辛い描写が多い一方で、対人関係や社会生活での生々しい憤りに思わず自分を重ねてしまうような作品でした。もし、まだ読んだことがない方は是非、落ち込んだときなどに読んでみてください! 不思議と元気をもらえます。(SPBS編集部・インターンI)


『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』(小原晩 著・発行/2022年)

本を読み進めるうちに、著者の言葉や視点が好きすぎるあまり、勝手に著者を「心の友」認定してしまうことが度々あります。本書も、そのうちの1冊。冒頭に出てくるエピソード「唐揚げ弁当」的な経験をしたことが私自身もあったり、喫茶店への愛がにじみ出る文章に共感してうっとりしてしまったりと、登場するエピソードや固有名詞に親しみがあり、なんだか、幼い頃に仲よくなれそうな友達と出会ったときのような純粋なうれしさを感じました。
ただ自分の日常を過ごしていたら知り得なかったことや、「心の友」と思えるような人に本を通じて出会うことができるのは、読書の大きな醍醐味のひとつだと思います。これから新刊情報が出るたびにワクワクすることになりそうな作家さんと出会えた、よい2023年でした。(SPBS広報・T)


『躁鬱大学』(坂口恭平 著/新潮社/2023年)

振り返ってみると、気分の浮き沈みに悩まされた1年でした。爽快な気分で目覚めて朝食をモリモリ食べ、勇躍デスクワークに就いたものの、その数時間後には「自分はダメ経営者だなぁ……」と頭を抱えて落ち込んでしまう、なんてこともありました。
小さな自信の獲得と喪失を繰り返す日々。高揚感と不安感がない混ぜになった名状しがたい感情の奔流に溺れかかっていたまさにそのとき、〈SPBS TORANOMON〉で目にしたのが、“躁鬱”というリアルな文字と可愛い猫のイラストのコントラストが鮮烈な坂口恭平さんの『躁鬱大学』でした。
「躁鬱人のためのガイドブック」を目指してつくられた同書が躁鬱人を見つめる眼差しはひたすら温かく、そこに描かれる躁鬱人の特徴と特質はどこまでも的確です。躁鬱系だという自覚がある人なら自分を理解する参考書として違和感なく読めるし、非躁鬱系の人も、躁鬱人の取扱説明書として楽しむことができるでしょう。
仕事で壁にぶつかったとき、稲盛和夫のマッチョな経営論を読もうとするのも自分なら、心のサプリメントのような『躁鬱大学』を読むのも自分。両方の自分がいて良いんだな、と肯定できるようになったのは、この本のおかげ。「人生ボチボチ、努力は敵、今のままで大丈夫」と語りかけることで脱力させてくれた坂口さんにありがとう! と言いたい気分です。(SPBS代表・福井盛太)


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2023年もありがとうございました!

みなさんの2023年のベスト本は思い浮かびましたか? ご紹介した書籍はSPBSでもお取り扱いがございます(一部を除く)。在庫状況は店舗によって異なりますので、ご興味のある方は各店までお問い合わせください。
 
年末年始、今年はご自宅で過ごす方も、お出かけや旅行をする方もそれぞれいらっしゃるかと思いますが、ぜひお気に入りの本とともに、良い年末年始をお過ごしください。
 
SPBSスタッフ一同、2024年もみなさんと本との新しい出会いをつくっていけるよう頑張ってまいります。どうぞよろしくお願いいたします!
 

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