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「苦手なことはみんなで補い合い、得意なことをどんどん伸ばす」──+SPBS兼CHOUCHOU店長に訊く、2店舗のセレクトとチームワークの話

“奥渋谷の本屋”〈SPBS本店〉を知る人は、渋谷の駅ビルにある雑貨店〈+SPBS〉〈CHOUCHOU〉の賑やかな雰囲気に圧倒されるかもしれません。お客さんは女性が9割で、店内の各所から「かわいい!」という声が聞こえるお店。「自分の好きな商品だから売れるというわけではないんです」と話す中井店長に、セレクトについて、チームワークについて聞きました。──2店舗を兼任する中井店長インタビューシリーズ後編。

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──+SPBSのオープンから半年でCHOUCHOUの店長業務に復帰し、2店舗の店長を兼任する形となった中井さん。両店の商材のセレクトは、どんなサイクルで進めているのですか?

中井:私、本当にせっかちなんです。こういうものがあったらいいなとか、こんなフェア組んでみたい! と思ったらその日のうちに商材を探して、SNSやwebサイトを見て気になったアイテムをスクリーンショットして、次の日にはブランドやメーカー、個人の作家さんへ連絡します。

実は昔は決め事に対して「一旦考えてもいいですか?」と言うのが口癖だったんです。でもあるとき店長業務をする中で、そうやってどこか引っかかったり微妙だと思ったりするポイントがあるのに、寝かせてもいいことはないと気づいて。それから「一旦考える」のを止めてすぐ判断するようにしたら、仕事も円滑に進むようになり、目先のフェアだけでなく半年先のプランまで見通せるようになりました。

──すばらしい! 見習いたいです。でも「判断する」ということはいい話ばかりではなく、断る勇気も必要ですよね。

中井:そうですね。以前は、熱意を持って接してくださる商談相手の方にお断りするのを伝えることが苦手だったのも、一旦寝かせてしまっていた理由のひとつです。でも「もっとこうだったら+SPBS/CHOUCHOUで売れる」という理由も含めてお断りを伝えるようにしたら、商談先の方も納得してくれて、むしろ「もっと聞かせてください!」と言ってくださる方もいて。断ることが逆に信用につながっていくこともありました。

──中井さんの中で商品をセレクトする基準は何ですか?

中井:“見た目と値段”です。見た目は商品本体もパッケージも両方大事なポイントです。あとはお店のメインターゲットであるギフトや差し入れ、お土産の需要に合うかを見ています。自分が気に入ったものが売れるということではないんです。もちろん好みのものが集まってはいますが、スタッフに「私だったらこれは選ばないんだけど、みんなだったらギフトに選ぶ?」と聞いて「かわいいと思います!」と言われて驚くことも。それで取り扱ってみて売れることもありますね。「これ」と説明できるような基準ではないので、難しいなと思いながら日々勉強しています。

──なるほど、はっきり言語化できないような基準をかぎわけられるのが、中井さんが「天才」と言われるゆえんなのかもしれませんね。ところで、コロナ禍で店舗を運営していて、お客さんの消費行動の変化は感じますか?

中井:大きく変わりました。以前はゴルフの景品のように、何かの集まりやイベントで渡す小さいギフトを小分けでラッピングしてほしいというお客さんが多くいらっしゃいましたが、そういうのはまったくなくなり、いまは家で使うものが人気になりました。代表的なのはキャンドルですね。お客さんと同じように自分自身も消費行動が変化していて、以前は興味のなかったキャンドルを家で使い始めたりもしているので、自分の直感も大事にしています。

──CHOUCHOUと+SPBS、両店舗はともに渋谷駅に直結して隣り合うビルにありますが、お客さんの層は?

中井:本当に同じ渋谷かと疑うくらい違います。CHOUCHOUはゆっくり買いものを楽しんで、「どっちが似合いますか?」などと私たちに話しかけてくださる方が多いです。反対に+SPBSのお客さんはせかせかしていて決断も早い。自分で決める人がほとんどです。

──2店舗のスタッフは別々ですか?

中井:いえ、+SPBSとCHOUCHOUを行き来するシフトを組んでいるスタッフがほとんどです。それによって満遍なくコミュニケーションが取れるようになりました。急な体調不良などでお休みのスタッフが出たときに補える関係も安心です。

両店の副店長の存在にもすごく助けられています。CHOUCHOUの副店長は人当たりが良くて、聞き上手なのでアルバイトスタッフのケアもお願いしています。+SPBSの副店長はすごくしっかりしていて、私の秘書のように予定管理までしてくれています。「中井さん、今日13時からアポあります」「そうだっけ?」「CHOUCHOU待ち合わせです」みたいに先回りして教えてくれることがよくあります(笑)

アルバイトスタッフの中には、接客が苦手でなかなかお客さんには話しかけられないけれど、品出しが得意だったり、逆に接客がとても好きで上手なスタッフもいたりするので、接客中心のCHOUCHOUとスピード感が求められる+SPBSで適材適所見極めながらシフトのバランスを考えています。苦手なところはみんなで補い合えばいいから、無理に頑張ろうとせずに、得意なことをどんどん伸ばしていってほしいですね。

──会社としてのSPBSはどんな印象ですか?

中井:「自分がトライしてみたいことは、しっかり組み立てればチャレンジしていい」という文化があると思います。本を売るだけじゃなくて、+SPBS/CHOUCHOUのような雑貨中心の業態を運営していたり、編集部があったり、新しい事業を常に企画している。いろんなことができる。私もそんなふうでありたいなと思います。

──最後に、これからについて聞かせてください。

中井:CHOUCHOUはオープンから10年近く経ち、ある程度ペースは掴めていますが、+SPBSは2019年末オープンのまだまだ新しいお店です。ギフトを探しているときに、一番に思い浮かべてもらえるお店を目指して、どんどんアップデートしていきたいです。オープン後すぐ新型コロナウイルスの感染拡大があり、イベントや列ができるくらいファンの多いキャラクターのアイテムを販売する企画を実現できたことがないのですが、新しい企画もどんどん挑戦していきたいですね。先の読めない状況は続きますが、いつ訪れても欲しいものや誰かに渡したいギフトが見つかると思ってもらえるようなお店をつくって、お客さんを迎えたいと思います。


+SPBS兼CHOUCHOU店長 中井絵里可(なかい・えりか)さん
1991年生まれ。北海道出身。大学在学中にCHOUCHOU渋谷ヒカリエShinQs店のアルバイトスタッフとして2年間勤務。一般企業に就職したのち、2015年SPBSに入社。2016年からCHOUCHOU店長を務める。2019年に+SPBS渋谷スクランブルスクエア店がオープンし、現在は両店舗の店長を兼任する。