「SPBS本店は、これまでに関わってきた人の“好き”が詰まったお店」──SPBS本店店長に聞く、いまとこれからの話
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「SPBS本店は、これまでに関わってきた人の“好き”が詰まったお店」──SPBS本店店長に聞く、いまとこれからの話

アルバイト時代にSPBS本店「ソーシャル」棚担当となった黒澤雄大さん。2020年に店長に就任して芽生えた裏方意識について、2020年という1年間のこと、SPBS本店が積み重ねてきた13年を受け継ぐことへの思い、最後にこれからの話を聞きました。──今年、13周年を迎えたSPBS本店の店長インタビューシリーズ第3弾(最終回)。

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──店長になったのはいつ頃ですか?
黒澤:2019年末に当時のマネージャーに声をかけていただいて、2020年1月から店長を担当しています。

──アルバイト時代との一番の違いは?
黒澤:やはりお店全体の売り上げに対する意識ですかね。アルバイトのときは全体の数字を管理する立場にはなかったので、自分が担当している売り場のことだけを考えていました。その中でいかに効率よく作業をするか、選書をどうするかという「点」を意識していたんです。

店長になったことで目標をどこに置くのかの捉え方が、ひとつの棚からお店全体へと変化したと感じています。選書や企画については、基本的にはスタッフの好きなようにやってもらい、自分は裏方としてその選書や企画、スタッフの得意なことをどうお店につなげるか、売り上げをつくるためにどうすればいいかを考えるようになりました。店長としてそれがいいのか、ということは正解がないので正直今でも迷います。ただ、意識としてはそこが変わりました。

──入ってすぐ正面の新刊台は、その意味では「点」の集まりと言えますね。
黒澤:そうですね。新刊だけでなくスタッフから気になっている本を募り、並べているものもあります。新刊台で大事にしているのは、分け隔てのないセレクトです。入った瞬間に「楽しいなこのお店」と感じる気持ちを、偏りのない形で引き出したいと思っています。

いまの課題は、選書や企画のための情報収集です。インターネットで検索をしたり、本屋に行ったりするだけでは、すでに世に出たものの二次情報しか得られません。毎日たくさんの本が刊行されている中でまだ世に出る前の情報を集めるには、営業に来てくださる方の話を聞いたり、スタッフの気になっていることを聞いたり、あらゆることに興味を持って勉強して、自分から情報を取りに行く必要があると感じます。

──店長1年目=2020年を語るには、新型コロナウイルスの存在を無視できません。毎日が戦いだったのでは?
黒澤:目の前のことに必死でした。4〜5月の休業期間が明けてからは「フェアを企画する」「商材を集める」「去年何やっていたか振り返る」と考え続ける1カ月をひたすら繰り返していたと思います。お店についてじっくりと考えることはできなかった。ただ、それでもコロナ禍で1年お店を守ることができたというのは、自分の中で大きいです。なんとか回ったと。

──改めて、SPBS本店を一言で表すと?
黒澤:これまで関わった人の「好き」が詰まったお店。例えばコミック棚では、萩尾望都さんの作品は僕が入る前からあるし、近藤聡乃さんの著書『A子さんの恋人』(KADOKAWA)のようにお客さんの好みも詰まっているし、いまの担当スタッフが好きな矢沢あいさんの作品も置いています。あちこちに点在する誰かの「好き」を受け継ぎながら、変化していっている感じがします。

お店としては、ブックディレクターの幅允孝さん(BACH代表)が選書を手掛けていた立ち上げの頃とは中身もやっていることも大きく変わりました。それでも受け継いでいるものはある。そういう受け継ぎ方と変化のバランスがお店の好きな部分です。そしてそのことをお客さんも面白がってくれているからこそ成り立っているお店だとも思います。

──会社としてのSPBSの特徴を教えてください。
黒澤:SPBS本店と根本は同じだと思います。あらゆるものごとを「編集」するという軸を持ちながら、変化に対して抵抗がないことは、僕が働きやすいと感じる部分です。

──黒澤さんにとって「編集」とは?
黒澤:編集している感覚はあまりないのですが、「人を思いやること」でしょうか。それぞれの好きなものをお客さんに届きやすいように整えていく。想像力を働かせて、お客さんの気持ちに寄り添っていくことが、僕なりの編集なのかなと。

──最後にSPBS本店のこれからについて聞かせてください。
黒澤:僕の中では、前の店長がつくっていたSPBS本店が正解という意識がどこかにあり、それを目指してしまっている部分があるので、過去のイメージにとらわれず、変えられる部分は変えていきたいと思います。

以前、京都にあるホホホ座というお店の店主・山下賢二さんがご自身の著書の中で、「本屋は負けた人がくるところ」と言っていたのが印象に残っています。本屋というのは、何かに負けた人が心を回復して帰っていく場所でもあるんじゃないかと。SPBS本店も来てくれた人が元気になるお店にしたいと思っています。


SPBS本店店長 黒澤雄大(くろさわ・ゆうだい)さん
1993年生まれ。兵庫県出身。2016年に国立本店・ほんとまち編集室 6期のメンバーとして加入。2017 年にYATAI BOOKSをスタート。大学卒業後、SPBS本店にアルバイトスタッフとして入社。2020年より店長を務める。



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