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歌集の表現を自由に楽しむことで、自分を見つめ直す【歌集編集ワークショップ[第2期]企画者インタビュー:後編】

歌集編集を学ぶ人気講座「短歌を詠んだら歌集を編もう。SPBS THE SCHOOL 歌集編集ワークショップ」。「短歌を詠み、歌集を編む」過程を経験することで、どのような世界が広がり、自分自身の表現を見つめ直すことができるのか。後編では、本講座を企画したSPBS THE SCHOOLの北村祐と鈴木美波に、講座のハイライトを中心に話を伺いました。

▼ 前編はこちら


歌集の表現の幅広さを学び、「自分の歌集」をつくる

──講座で印象に残っているエピソードはありますか?

鈴木:第6回以降の回に講師としてご登壇いただいた小島なおさんの講義です。小島さんはミニ歌集の編集者でありながら、一人の歌人として著者である受講生に寄り添う立場でも制作をサポートしていただきました。

第6回で「啓発本など誰かの知識の参考になる本を作るならまだしも、自分のポエムを本にして晒そうとする精神、皆さんシラフじゃ耐えられないでしょう?」と、笑顔でお話されていたことが印象的でした。それはつまり、自分以外の人たちから投げかけられる客観的な意見やアドバイスを一つひとつ冷静に受け入れる必要は必ずしもなくて、「自分の歌集」を作る上で、主観や譲れないこだわりがある時はそれを貫いても良いんだよ、というメッセージだった思うんですよね。歌人としての小島さんが歌集に向き合う上での姿勢を感じることができた瞬間だったのと同時に、これから初めて歌集を作る受講生がそれぞれの表現に自信を持って向き合えるように背中を押す姿に感動しました。

北村:小島さんの受講生への向き合い方は素晴らしかったですね。「シラフでは人に見せることが難しいくらいセンシティブな表現と向き合い、一緒に何かを作っていく」というのは、相手から大きな信頼を得ていないと難しいことだと思うんです。小島さんが受講生に対して真摯に接する姿勢や程よい距離感の取り方は、今期の講座の中でも特に印象に残っています。

「歌集編集ワークショップ[第2期]」 第6回の様子 (左)筒井菜央さん (右)小島なおさん

北村:あとは、「ラス前」のエピソードも印象的でした。第3回では、永井祐さんと平岡直子さんを講師にお招きして、短歌の選び方や並べ方についてお話いただきました。「一首目から攻める」「二首目からドライブをかける」など、歌集の中で短歌をどのように並べるかについてさまざまなパターンを紹介してくださったのですが、永井さんが「俺はラス前。最後から一首前の短歌は何を持ってきても大丈夫」とおっしゃっていたことが面白かったです。

「歌集編集ワークショップ[第2期]」 第3回の様子 (左)筒井菜央さん (中央)平岡直子さん(右)永井祐さん

鈴木:タイトルへのこだわりや1ページに短歌を何首まとめるかなど、細かい点においてもゲストの皆さんそれぞれに独自の方針があるんですよね。ただ、そのような考え方を絶対的なものとして受講生に押し付けるのではなく、「あくまでも自分の場合はこうしている」という姿勢で大切にしているポイントをお話されていたことが印象的でした。

定型詩の短歌を並べて作る歌集は、制約が多くて変わり映えしない表現形式になるように思われますが、制作過程で決めることがとにかく多いので、出来上がる歌集は人によって変わってきます。講座でも、ミニ歌集の編集担当の筒井さんと小島さんからフィードバックを受ける機会がありましたが、それを踏まえた上で、意思を持って歌集の方向性を最後に決定するのは著者である受講生の皆さんでした。企画者としても、その人が何をどのように表現したいかによって歌集ごとに全く別の世界観が立ち上がってくる様子を間近で見ることは、すごく不思議で興味深い経験でした。


誰もが自由に短歌や歌集を楽しんでいい

──歌集と一括りに言っても、それぞれの作品によって世界観は変わってくるんですね。
北村:制作コースの皆さんが作ったミニ歌集もそれぞれ世界観が全く違いますし、「一人ひとりの主観が尊重される」というのは、歌集の世界の魅力ですね。

これまで短歌や歌集に親しみがなかった人たちも、いろいろな歌集を手に取ってみて、ピンとくる作品に出会ってみてほしいですし、今回制作されたミニ歌集がその入り口になればうれしいです。

鈴木:歌集を作る側だけではなく、それを受け取る側にもいろいろな楽しみ方がありますよね。私自身、「短歌の世界は敷居が高そう」とハードルの高さを感じていた一人ですが、講座を通して「こんなに自由に作品を楽しんでもいいのか!」という発見があり、心理的なハードルが下がったと感じています。だからこそ、「誰もが自由に短歌や歌集を楽しんでいい」ということをもっと多くの人に伝えたいです。


「短歌を詠み、歌集を編む」ことで、自分自身を知る

──最後に、企画者としてこの講座をどのような人たちに届けたいですか?

鈴木:既に短歌を詠んでいる人や歌集を作ってみたいと思っている人には、ぜひ受けてほしい講座です。

また、短歌以外の表現活動をされている人たちにとっても充実した内容になっていると思います。なぜなら、歌集編集のプロフェッショナルであるナビゲーターや講師の皆さんが、その過程で何を大切にしているのかについて話を聞くことは、それ以外の活動にも生きてくる学びが多いからです。「普段は絵を描いているけれど、歌集を作ることが展示の並べ方の参考になった」とおっしゃっていた受講生もいました。

北村:表現における客観性や、自分の作品との関わり方について得られる学びが多いですよね。

聴講コース(受付終了)やアーカイブ視聴コースでは、最近なんとなく短歌に興味が湧いてきた人、歌集の装丁デザインに関心がある人、歌集を販売する立場になりたい人など、受講していただいた背景はさまざまでした。「歌集がどのように生まれるのか」というテーマに少しでも興味がある人たちにこの講座が届いてほしいです。

「歌集編集ワークショップ[第2期]」企画担当 北村祐(SPBS THE SCHOOL)

鈴木:そうですね。そして、アーカイブ視聴コースをお申し込みいただいた人たちにも、ぜひご自身で歌集を編んでみてほしいです。歌集を編むことで得られる学びは、短歌の世界について知るだけではありません。歌集には正解がないからこそ、「何がしっくりくるのか」「何が好きなのか」ということを常に試行錯誤しながら作るので、自分自身が大切にしている創作の軸を見つめ直すきっかけにもなると思います。

これからも、「短歌を詠み、歌集を編む」という過程で得られるさまざまな学びを多くの人に広げていきたいです。

SPBS TOYOSUでは、7月2日(火)から7月16日(火)まで〈ミニ歌集刊行記念フェア〉を実施しています。第2期の制作コース受講生の皆さんが作ったミニ歌集を販売するので、ぜひ遊びにきてください。また、7月14日(日)にはトークイベントも開催いたします。詳細はSPBSのHPからご確認ください!



「短歌を詠んだら歌集を編もう。SPBS THE SCHOOL 歌集編集ワークショップ[第2期]」アーカイブ視聴コースの受講生を募集中です。
申込締切:2024年8月末まで

受講生によって制作されたミニ歌集は、オンラインストアからもご購入いただけます。

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