なぜ、「紙の雑誌編集」を学ぶのか?──「SPBS編集ワークショップ2023」受講ガイドその②
こんにちは!SPBS THE SCHOOL 編集ワークショップ担当の鈴木です。
4月29日土曜スタートの「SPBS編集ワークショップ2023」は、メンバーも集まり、無事開講が決定いたしました。ありがとうございます!
このnoteでは、ガイダンスでも触れた「なぜ今、紙の雑誌編集を学ぶのか」について、詳しく説明していきます。受講を検討されている方の参考になれば嬉しいです。(「SPBS編集ワークショップ2023」の詳しい内容はホームページや先日実施したガイダンスをご覧ください!)
なぜ、雑誌編集のワークショップなのか
編集を学ぶ講座は数あれど、紙の雑誌の編集ってこれからも役に立つのだろうか? そう考える方は多いのではないでしょうか。毎年、雑誌が休刊するニュースを目にしますし、今は誰もがスマホを手にしている時代。いまさら紙の雑誌の編集なんて……と考えるのも無理はありません。
しかしSPBSでは、「伝えたいことがある」全ての方にとって、ライフスキルとして編集を学ぶ意味があると思っています。さらには、紙の雑誌を制作するという経験を通して得られる学びは特別だと考えているのです。
書店員からみた雑誌
本屋の現場から雑誌を考えてみます。SPBSは約30坪のセレクト本屋ですが、雑誌も割としっかり展開しています。ただし、ここ数年でその「雑誌」の捉え方に変化が生まれています。雑誌コードが付いて広告が入っている、というようないわゆる従来の商業雑誌だけでなく、個人やグループで小さくつくる、インディペンデントで面白い雑誌が増えているんです。
このような雑誌は、ひとつの表現として紙の雑誌を積極的に採用しているように見えます。情報はSNSなどのツールに任せて、紙でしかできないことをやる。作り手のクリエイティビティが発揮されているものが多く、読み手としても新鮮な発見があるんです。
ガイダンスでは書店員目線での「雑誌」と捉え方の変遷を、こんなスライドを使って説明しました。
実際、インディペンデント雑誌はその売れ行きも目を見張るものがあります。
編集者からみた雑誌
一方で、数ある編集物の中でも紙の雑誌づくりとはどんなものなのでしょう? SPBSの編集者たちとの対話でわかったのは、とにかく自由だということ! どんなコンセプトで、どんな企画にするかといったコンテンツに始まり、何ページにするか、どんな大きさにするか、紙選び、文字の大きさやフォントの選定、紙面レイアウト、縦組み横組み、印刷方法などのデザイン周りに至るまで、あらゆることを予算内で調整し、決めていくのが紙の雑誌です。決めることができるということは、「決めないと先に進めない」ということでもあります。紙の雑誌編集とは、実は、ミクロな意思決定の積み重ねででき上がっているものなのです。
実際に経験してみると、こんなところまで判断するのか! と驚かれる人もいらっしゃるでしょう。その判断のポイントに絶対的な正解はなく、何を拠りどころにして判断するかという意味で「自分」が出てきます。雑誌編集長を経験するということは、自分の内面と向き合うことでもあるのです。自分と向き合い、意思決定を重ねていくその経験は、日頃の生活や仕事でも応用が効く、まさにライフスキルにつながるものだと思うのです。
SPBS編集ワークショップ2023の企画はこうして生まれた
以上のことから、書店員目線でも、編集者目線でも、「表現手段としての雑誌の可能性」と「雑誌編集スキルを学ぶことの可能性」を感じ、今回の編集ワークショップを企画しました。
ゲスト講師は、そんな可能性を広げてくれるであろう経験値の高い方々にお願いしています。SPBSでも人気の本や雑誌を手がけるみなさんで、自分の中に火が灯っているというか、エンジンのある素敵な方々ばかり。話の内容はもちろん、それぞれの編集に対する姿勢もお届けできればと思っています。
編集はどこまでも自由で多様なものであり、「正解」はありません。しかし、よりよく人に伝えるための「セオリー」はある、というのがSPBSの過去の編集ワークショップから代々受け継がれている考えです。ここでは、そんなセオリーを学びながら、ゼロからの企画立案、構成、取材、執筆、レイアウト、校正など、すべてのプロセスを一通り経験し、自分なりの意思決定の軸に向き合い、「編集」の複雑さや大変さや難しさと、それらを凌駕して余りある面白さや可能性を体感していただきます。
最後に、雑誌編集を「みんなで」学ぶ意味
ここまでお読みいただきありがとうございます。「なぜ、雑誌編集なのか」について書いてきたこの記事の締めくくりに、なぜ「みんなで」学ぶのか?についても触れておきます。ワークショップの「制作コース」と「聴講コース」を迷われている方の参考になれば幸いです。
(*補足:雑誌制作コース、聴講コースは共に満席となりました。ありがとうございます!)
雑誌編集を「みんなで」学ぶことで得られるものってなんだろう? 企画したチーム内で突き詰めていくと、「客観視する視点」と「発想の広がり」の2つが浮かび上がってきました。
講師からのフィードバック、参加者それぞれの制作プロセスを見ることで、自分の考えや表現を相対化し、編集内容を客観視したり、仲間のアイデアから刺激やインスピレーションを受けられます。そうすることで視点が広がり、一人で雑誌づくりをするよりも、発想や表現の幅が格段に広がるのではないかと思います。
ワークショップで制作した雑誌はSPBSなどで販売することを目標としており、他者へ届ける・読まれていく緊張感まで経験します。自分だけが満足する雑誌をつくるのではなく、「何かを伝える手段としての雑誌制作」を学ぶ。そのためには講師はもちろん、他者の力を借りることも必要だと考えているのです。
ワークショップ当日やSlackでは、受講生同士でもゆるやかな連携が生まれるよう運営していきますので、ぜひ楽しみにしていてください!
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