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「見えていなかった世界が見える棚をつくりたい」──SPBS本店店長のアルバイト時代のこと

2017年に移動式本屋「YATAI BOOKS」をスタートした黒澤雄大さん。その後就職先としてSPBSを選び、SPBS本店のアルバイトに。アルバイト時代からずっと担当している棚(ジャンル)のこと、平田オリザさんの著書から考える「共感」と「否定」について──今年、13周年を迎えたSPBS本店の店長インタビューシリーズ第2弾。

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──移動式本屋といえば、SPBS本店の初代店長で現在BOOK TRUCKを運営されている三田修平さんが思い浮かびます。SPBSに入った経緯にも関係がありますか?
黒澤:はい。SPBSに入りたいと思った理由が大きく2つあるのですが、1つは三田さんの存在です。移動本屋の大先輩である三田さんがいたお店として、当時からよく知っていました。

もうひとつの理由はYATAI BOOKSをはじめるタイミングで、内沼晋太郎さん(本屋B&Bと出版社NUMABOOKSを経営)の著書『本の逆襲』(朝日出版社)を読み、内沼さんの主催する「これからの本屋講座」に参加したこと。内沼さんの考える本屋=ただ本を売るだけの場所ではなく、“本とのつながりを生む場所”という捉え方が、本を入り口にして色々なことにチャレンジしたいと考えていた当時の自分にとってしっくりきたんです。

その後、大学卒業を目前にして「本屋に入りたい」と思ったとき、最初に浮かんだのがSPBSです。内沼さんの経営するB&Bにももちろん興味がありましたが、そのときはインターンのみの募集だったのと、出版、編集、イベント、ギャラリーとさまざまなことを多角的に運営しているSPBSが、本を通じてつながりを生みたいという自分の思いと近いのではないかと考えたからです。それで、SPBSのHPを毎日チェックして、アルバイトの求人が出たときに応募して採用されました。

──アルバイトとして入ったSPBS本店の第一印象は?
黒澤:まず、スタッフの知識量に圧倒されました。僕は本を読むことは好きでも、本を媒介としたカルチャーについては詳しくなかったので、音楽や映画、お店、食べものに至るまであらゆることに詳しいスタッフと一緒に働くことで、とても刺激を受けました。

SPBS本店での最初の仕事はレジと店内整理。机の下やバックヤードのストックを取りやすいように置くとか、ストックも店の一部だからきれいに並べるとか、基本的な部分にも想像以上に気を配っていて、その細やかさに驚きました。僕は細かいことに気がつかないことが多くて、というか気づいていないことにも気づけず、最初はひたすら怒られていました(笑)。普通にお客さんとして行っていたときには目に入らなかったけれど、目に入らないこと自体が毎日続けられてきた店内整理の成果なのだなと。

──たしかに裏側を知ると、店内が清潔だと感じる理由がわかりますよね。
黒澤:はい。商品を並べるときもお客さんにとって手に取りやすいかどうかとか、どうすれば手に取ってもらえるかを常に考える。前の店長には、「お客さんに対する想像力を働かせる」ということを徹底して教えてもらったと思います。

──SPBS本店は一つひとつの棚(ジャンル)に担当がついていますが、黒澤さんのアルバイト時代の担当を教えてください。
黒澤:僕はアルバイト時代から今もずっと「ソーシャル」の棚を担当しています。お店の入り口から見て右手の一番手前のエリアですね。もう3年になるので、思い入れもとても強いです。大事にしているのは「学ぶ」ことを肯定する姿勢。なにかしら学びたいと思っている人が自然に手に取りたくなるような本を選ぶことを心がけています。

──ソーシャルの棚の中で思い入れの深い1冊は?
黒澤:僕がすべての人に読んで欲しいと思っているのが、平田オリザさんの著書『わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か』(講談社現代新書)です。この本には、 “わかりあえない”ことを認識することから“わかりあう”という行為がはじまるのではないか、ということが具体的な事例を引用しながら書かれています。

Twitterがわかりやすい例ですが、いまは「共感」が重要視されていて、「共感できる/できない」のいずれかを主張する発言がタイムラインに溢れています。異なる考え方に直面したときにそれを否定することは簡単ですが、それを続けていくと段々と自分の好きな世界でわかりあえる人と一緒にやっていけばいいというシステムになっていってしまう。

──なるほど。
黒澤:もちろん“わかりあえない”という経験はしんどいです。時には傷つくこともあります。でも諦めずにコミュニケーションを取っていくことで、自分の見えていなかった世界が見えるのではないかと僕は思います。

(つづく)

SPBS本店店長 黒澤雄大(くろさわ・ゆうだい)さん
1993年生まれ。兵庫県出身。2016年に国立本店・ほんとまち編集室 6期のメンバーとして加入。2017 年にYATAI BOOKSをスタート。大学卒業後、SPBS本店にアルバイトスタッフとして入社。2020年より店長を務める。

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