「実はSPBSを一度出て、戻ってきたんです」──+SPBS兼CHOUCHOU店長が、店長になるまでの話
──今日は中井さんの持ち前のセンスが、どのように磨かれていったのかを解き明かしたいと思います。中井さんは小さい頃からおしゃれが好きだったんですか?
中井:はい、幼い頃からファッションが好きでした。仲のいい友人たちに影響を受けて、メゾピアノやナルミア・インターナショナルなど、流行りのブランドのお店をチェックして。ミーハーながらも自分なりのこだわりが強く、小学生の頃のランドセルは横型で、色はチェリーピンクを選んでいました。毎年テーマカラーを決めて「今年は黄色しか着ない!」とか宣言して(笑)
──それはまた個性的な小学生ですね(笑)。ファッションにまつわる情報の収集方法は?
中井:雑誌をよく読んでいました。高校までは北海道で暮らしていたので、東京のように街を歩いているだけでは情報は入ってこなかったんです。渋谷のギャルに憧れていたので『ピチレモン』『Seventeen』『Popteen』を読みあさり、3人の女子高生ギャルが主人公の『GALS!』という漫画を愛読していました(笑)。当時は厚底の靴やルーズソックスが流行っていて、〈渋谷109〉に行くのが憧れでした。いつか東京で働きたいと思っていたので、まずは東京の生活に慣れるために大学から上京しました。いま〈109〉のすぐそばで働いているなんて当時の私は信じられないと思います。
──大学時代はどんなことをしていたんですか?
中井:キャンパスライフよりも、宝塚中心の生活でしたね。日比谷にある東京宝塚劇場に通っていたので、ある意味それが私にとってのサークル活動でした。できるだけすぐ劇場に行って出待ちをできるように、アルバイト先は日比谷の飲食店を選びました。たまに宝塚の現役の方が私の働いているお店に来て食事をするのがとってもうれしくて。宝塚はいまも変わらず大好きで、特に好きな組は、同じ公演を2回以上観ます。
▼宝塚好きが高じてCHOUCHOUでフェアを開催したことも
──SPBSが運営する雑貨店〈CHOUCHOU(当時:SPBS annex)〉でアルバイトし始めたのもその頃?
中井:そうですね。大学3年生のときでした。渋谷ヒカリエにふらりと立ち寄ったときに、かわいい雑貨屋さんがある! と衝撃を受けたんです。店内を見て回り、レジ横を見たら「アルバイト募集」という張り紙が。家に帰ってすぐに連絡しました。
──幼い頃からファッションが好きだったなら、アパレルという選択肢もあったのでは?
中井:飽き性なので、アパレルだとその店で取り扱っている服ばかり着ることになるのが嫌だったんです。セレクトショップであれば商材も入れ替わるし、特にCHOUCHOUは2週間ごとに新しいフェアが始まるお店だから、飽きないどころか飽きる前に変わっちゃう。そこもすごく性格に合っていたのだと思います。
──アルバイト時代に任された仕事について教えてください。
中井:レジと接客が中心でした。その頃はバッグなど接客ありきのアイテムをセレクトしたフェアが多かったので、当時の店長に指導してもらいながら学んでいきましたね。アルバイトなので大きな仕事を任されることもなく、責任もいまほどではなかったので、純粋に楽しく、週2くらいのペースで働いていました。大学を卒業して、就職するまで続けました。
──就職、ということは、一度別の会社に就職してSPBSに戻ってきたんですか?
中井:そうなんです! 新卒で入った会社があまり自分に合わなくて、1年ほどで辞めたいと思い始めていました。そのとき急に当時のSPBSのマネージャーから「最近何していますか? ちょっと話しませんか」とメールが届いて。アルバイト時代は、マネージャーと直接話すような機会は少なかったので、突然の連絡に驚いたのを覚えています。そこで「SPBSに入りませんか?」と声をかけてもらいました。
入社後はCHOUCHOUの販売担当として勤務して、2016年に前店長が退職することとなり、私が店長を引き継ぐこととなりました。
──店長となると予算や先を見通したフェアスケジュールの管理、スタッフのケアなど業務は多岐に渡りますよね。最初、戸惑いはありませんでしたか?
中井:そうですね。初めの頃は商材のセレクトでいっぱいいっぱいになっていました。そこで運営面の仕切り直しをしてくれたのは、いまの営業担当兼マネージャーです。当時は知識が少なかったのでいろんなことを教わったり、業務を分担したりしたことで、特に予算管理についての意識は大きく変化しました。いま、アルバイトスタッフを含め予算意識を高く保てているのは、この時期があったからだと思います。
2019年に渋谷スクランブルスクエアへの新規出店が決定し、立ち上げを任されることになったので、開業前後はCHOUCHOUの店長を別の担当に引き継ぎ、+SPBSのオープン準備に全力を注ぎました。
──“本とギフトの店”+SPBSの準備期間について詳しく教えてください。
中井:大枠の「ギフト」というコンセプトだけ決まっていて、あとは「自由にお店をつくっていい」と言われてわくわくしたことを覚えています。でも最初から自分の思う通りにできたかと言うとそうではなかったです。CHOUCHOUの3倍以上の広さをどう埋めていくか、考えたことのない規模だったのでとても悩みましたね。ようやくお店として自分で納得できるようになったのは、2020年のクリスマスあたりからです。
(つづく)
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