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【企画担当者に聞く!】「選書」は学びの宝庫!SPBSがナビゲートする、本の世界の歩き方。

2024年1月からスタートするSPBS THE SCHOOLの新講座「選書のたんけん」。ナビゲーターは、SPBSにオープン当初から関わり 、本屋の現場、社外のライブラリー制作、編集、講座・イベントの企画など、さまざまな業務を経験してきたSPBS THE SCHOOL鈴木美波(すずき・みなみ)と工藤眞平(くどう・しんぺい)の二人です。今回はメインで企画運営を担当する工藤に、講座の内容や選書という仕事について、じっくり話を聞きました。

「選書」とはどんな仕事なのか


──今回の講座「選書のたんけん」とは、どんな講座ですか?

工藤:簡単にいうと、SPBSが本を取り扱う各店舗やブックディレクションの仕事で普段やっていること、つまり本を選んで、本棚に並べて、お客さまに届ける、という一連の仕事において、特に「選ぶ」ことを中心にしつつ全体的に体験してもらう講座です。
日頃からよく『SPBSってどうやって本を選んでるんですか?』と聞かれることがあるので、それをそのまま講座のテーマにしてみました。

──そもそも「選書する」ってどういうことですか?

SPBS本店。一つ一つデザインの違う本棚に、スタッフが丁寧に選んだ本が並ぶ。

工藤:基本的には、読んで字の如く『本を選ぶ』ことです。新刊に限っても、日本では年間で7万点弱、1日あたり200点程度が出版されいます (※)。あまりに数が多いので、大型書店やチェーンの書店では、その部分のセレクトは「取次」と呼ばれる仲卸の業者さんから、見込みで本が送られてくる「委託配本」という仕組みを使っているところが多いです。

SPBSではその仕組みを導入していないので、新刊の仕入れにも必然的に「選書」が発生します。さすがに全ての新刊をチェックしているわけではないですが、膨大な本の中から、自分たちのお店にマッチする本を日々選んでいることになります。
※令和3年(総務省統計局HPより)

──新刊だけでそんなにあるんですね。そんな膨大な数の中から、どうやって本を選んでるんですか?

工藤:それは講座の中でお話します(笑)。ただ、一つ言えるのは、選び方についてのマニュアルのようなものは特にない、ということです。SPBS本店の場合、本棚のカテゴリ毎に担当者がいるのですが、その担当者個人の感性や興味関心に委ねられる部分が大きいです。ちなみに、私は以前別の本屋で働いていたときに、選書のマニュアルを作ってみようとしたことがあります。が、あまりうまくいきませんでした。結局、選び方は担当者の個性を重視した方が、面白い棚になっていく感覚があります。

また、選書の良し悪しは、お客さまが買ってくれるかどうかが一つの判断基準になっています。棚に置かれていた期間にもよりますが、売れた本はだいたいもう1回発注するので、その繰り返しで本棚のラインナップができてくる。つまり、自分たちで本を選んではいるものの、本屋の棚はお客様との共同作業で作られていくようなところがありますね」

──どこの本屋もそうなんですか?

工藤:いわゆる独立系書店と言われているような本屋さんは、その傾向が強いのではないかと思います。

店舗の選書に、ライブラリーの選書。選書にもいろいろある

──工藤さんは、現在は店舗ではなく、企業や飲食店などのライブラリーに置かれる本の選書を担当されているそうですが、お店の選書とライブラリーの選書ではどんな違いがありますか?

【選書例】木や森をテーマにした学びを提供する体験型施設「KIOND」のカフェライブラリー
(三重県多気町)
【選書例】渋谷駅から徒歩5分の複合型ホテル『ALL DAY PLACE』の客室内(東京都渋谷区)

工藤:場所にもよりますが、大きな違いは二つあると思っています。

一つは、ライブラリーの場合、必ずしも本を求めているわけではない人の利用を想定する必要があること。本屋の場合は、買う・買わないは別にして、本屋にくる以上何かしら本に興味関心がある人が大半だと思います。一方で、例えば飲食店に本棚を作る場合、多くの人は食事にきているので、ただ本が並んでいても風景でしかない。そこで手にとってもらうためにどういうアシストが必要か、ということは毎回考えさせられる課題です。

もう一つは、ライブラリーでは、多くの場合で設置後の本の入れ替えが難しいということ。本屋の場合は、常に棚の本は売れるし、新しい本もどんどん出版されるので、本が入れ替わり、”生きている”。一方ライブラリーは、たとえ新しく発行された本を揃えても、代謝がないので時間が経つとすぐに古く感じられてしまいます。古書や洋書なども織り交ぜて変化をつけますが、とはいえ昔の本ばかりだとあまりに新鮮味がない、そのあたりの折り合いのつけ方にも気を遣います。

──手にとってもらうコツはあるんですか?

工藤:それはもう、毎回試行錯誤しています。具体的なことは講座の中でお話ししますが、選び方としては、店舗の選書以上に、その空間や土地やそこを訪れる人との結びつきを強く感じてもらえる本を選ぶように心がけています。「今ここにいる自分に関係があるものだ」と感じてもらえると、手にとってみたくなると思います。

好きな本ではなく、テーマに沿って本を選ぶ。──講座のカリキュラムとブックフェアについて

──正直「本を選ぶ」こと自体は、ある程度本が好きな人であれば誰でもできてしまいそうです。となると、この講座で学べる選書とはどういうもので、どんな特徴があるのでしょう?

工藤:確かに、本を選ぶこと自体は誰でもできると思います。最近見かけることが多い棚貸し形式の一箱本屋さんなどでは、本屋未経験の方でも本を販売したりしていますよね。ただ、その場合は自宅の本棚から本を選んで、自分のおすすめの本を置いている方が多いのかな、と思います。

今回の講座では、参加者の皆様には、好きな本やおすすめの本を選ぶのではなく、選書のテーマをご自身で設定し、それに沿って現在流通しているすべての本の中から、本を選んでもらいます。実際に私たちが選書をするときも、テーマを設定し、いろいろな角度から考え 、テーマに奥行きや広がりを与えられるように本を選んでいきます。その際に実践しているテーマの広げ方や深め方、それに合わせた本の探し方などをお伝えしていきます。

──テーマはなんでもいいんですか?

工藤:はい。ただ、選書しやすい、しにくいなどの課題が出てくるので、テーマから一緒に考えていきます。

SPBS本店での講義の様子(編集のレッスン<第2期>より)

みんなで選書を学ぶ醍醐味

工藤:また、この講座では、選書は一人でもくもくと行うのではなく、他の参加者やナビゲーターである私たちと意見交換をしながら進めていきます。一方通行の講義ではなく、フラットに学び合う場であることも、この講座の特徴の一つです。さらに言うと、本を選んでいく過程で、他の人の選書も含め、知らない本との出会いがたくさんあると思います。実際選書の仕事をしていると、読みたい本のリストがどんどん増えていくのですが、そういうところも楽しんでいただきたいと思っています。

──それは楽しそうですね。全3回の講義&ワークの後に行われるブックフェアはどんなものなのですか?

工藤:SPBS本店とSPBS TOYOSUの店内でそれぞれ1週間ずつ“わたしはどのように本を選んだか。ブックフェア”を行います。テーマに合わせて各受講生が10冊の本を選び、それらの本をどのように選んだか、ということをPOPに書いて陳列します。一般的なPOPは本の推薦コメントを書きますが、今回は10冊の本を選んだみなさんの思考のプロセスを開示することで、お店を訪れた人に普段と違う角度からの本の提案ができるのでは、と思っています。

選書の中にある、普遍的な”学び”とは

──最後に、この講座を受講することで得られるものとは何でしょうか?

ナビゲーターを務めるSPBSの鈴木(左)と工藤(右)

工藤:『選書テーマになる言葉+本』などをgoogleやAmazonで検索すれば、それなりにたくさんの本が見つかります。そんな検索でたどり着ける範囲をどう越えていくか、ということは今回の講座で大事にしたいことの一つ。これは他の仕事にも生かせることなのではと思います。

また、テーマをもって選書することは、自ら問いを導き出し、自らそれに応答する行為だと思います。AIの登場によって人間の思考領域が変わってくる中で、このような力は普遍的なライフスキルの一つになってくるはずです。

とにかく、選ぶ過程も、選んだ本を誰かに手に取ってもらう喜びも合わせて、やってみると選書はとても楽しいです。新しい本は年間約7万点生まれ続けており、過去に遡ればもっともっと膨大な数の本が世の中に存在しています。その中にどんどん分け入って、未知の本との出会いを楽しんでいただければと思います。
その時に、先頭を歩く道案内役が今回のナビゲーターとしてのわたしたちであり、もしかしたら本屋の役割かもしれないなと思います。今思いましたが、講座の中でみんなで本屋に行ってみるのもいいかもしれないですね。

──まさに「探検」という感じですね。

工藤:はい。ぜひこの『探検』を一緒に楽しんでいただきたいです!

※「選書のたんけん」講座詳細はこちら(2024年1月15日 18:00まで受付中)

※お申し込みはこちら